上気道炎とは
呼吸の際に空気が通る道(鼻から気管手前まで)を上気道と言います。上気道には、鼻・副鼻腔、口腔(舌や歯周辺の粘膜)、上咽頭(鼻とのどの境界)、中咽頭(口蓋扁桃など)、下咽頭(食道との境界)、喉頭(声帯など)が全て含まれます。
急性上気道炎とは、鼻・咽頭・喉頭(鼻からのどにかけて)にウィルスなどの病原体が感染して起こるの炎症ことです。炎症は、発症箇所により、急性鼻炎、急性咽頭炎、急性喉頭炎などに分類されます。同時に複数の箇所で炎症が起こることもあります。
扁桃炎
のどの奥、口蓋垂の左右にある扁桃(口蓋扁桃)が、細菌やウィルスなどの感染により炎症を起こすことを「扁桃炎」と言います。急性扁桃炎は、免疫の役割を持つ扁桃が、疲労などで体力が落ちた時などに病原体の感染力に打ち負けると生じます。急性扁桃炎は、子どもや20-30歳代の若い方によく起こります。
【小児の扁桃炎で注意すべきこと】
扁桃炎を起こす原因菌に、溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)があります。溶連菌感染症は腎炎やリウマチ熱、心内膜炎などの合併症を引き起こす可能性があるため、小学生までは注意が必要です。溶連菌は検査(7分程度)で判別できます。溶連菌感染症の場合、抗生剤の投与で症状は改善しますが、合併症を回避するためにも7日から10日間継続して抗生剤を内服する必要があります。
主の症状
- のどの痛み
- 発熱(高熱)がある
- 耳に痛みがある
- 飲み込む時に痛みがある(嚥下痛)、痛くて食べられない
- 倦怠感(けんたいかん:体がだるい)
こうした症状のいくつかが現れます。
【扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍】
急性扁桃炎が悪化すると、扁桃の周囲まで炎症が及ぶ「扁桃周囲炎」や、扁桃の外側に膿がたまる「扁桃周囲膿瘍(のうよう)」を引き起こします。のどの強い痛み、唾液を飲み込むときの強い嚥下痛があります。痛みが強くて食事が食べられなかったり、口が開けにくくなったり、耳痛を感じることもあります。
治療方法
治療方法としては、
- のどの炎症・痛みに対して:炎症を抑える薬を使用します。
- 細菌感染に関して:抗生剤を使用します。
- ネブライザー治療
薬物療法と合わせて、充分な睡眠(安静)と栄養補給を行い、室内が乾燥しないようにしてください。また、喫煙者は禁煙するようにしてください。
急性扁桃炎で炎症がひどい場合は、外来で抗生剤の点滴を行います。食事がとれないなど炎症が更に高度な場合や扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍の場合、入院治療が必要になる場合もあります。また、扁桃周囲膿瘍の場合、注射針で腫れているところの膿を吸い出したり、切開して膿を出すこともあります。
急性扁桃炎を年3-4回以上繰り返す習慣性扁桃炎や、扁桃周囲膿瘍を繰りかえす場合は、扁桃摘出術をお勧めします。その場合は、連携病院を紹介します。
急性咽頭炎
急性咽頭炎は、細菌やウィルスが原因となって咽頭の粘膜やリンパ組織に起こる急性の炎症です。咽頭は口や鼻を通して外と接するので、細菌やウィルス感染を起こしやすいところです。最初の段階ではウィルス感染だけでも、のちに細菌感染を引き起こすことも良くあります。また、最初から細菌感染を起こすこともあります。
気温の変化、睡眠不足や疲れなどで抵抗力がおちている際に、細菌やウィルスに感染すると、咽頭が赤く腫れます。のどの痛みや違和感があり、食べ物や唾液を飲みこむときに痛み(嚥下痛:えんげつう)を伴います。全身の倦怠感、発熱があることもあります。
主な症状
- のどの痛み
- のどがヒリヒリする
- 咳・痰が出る
- 耳に痛みがある
- 飲み込む時に痛みがある(嚥下痛)、痛くて食べられない
- のどの違和感
- 発熱がある
- 倦怠感(けんたいかん:体がだるい)
こうした症状のいくつかが現れます。
治療方法
治療方法としては、
- のどの炎症・痛みに対して:炎症を抑える薬を使用します。
- 細菌感染に関して:抗生剤を使用します。
- ネブライザー治療
薬物療法と合わせて、充分な睡眠(安静)と栄養補給を行い、室内が乾燥しないようにしてください。また、喫煙者は禁煙するようにしてください。
【上咽頭炎】
上咽頭は鼻の奥にあり、のどの一番上に位置します。上咽頭炎は急性期の時は、のどの痛みとして自覚しますが、やがて痛みが治まり長引く鼻づまり、後鼻漏、のどの違和感といった症状がのこる慢性炎症(慢性上咽頭炎)となります。それに対し、塩化亜鉛液を上咽頭に擦りつける治療法(Bスポット療法(EAT:上咽頭擦過療法))が行われます。この処置を行うと最初は出血し痛みも強く表れますが、炎症が改善していくにつれ痛みや出血は軽くなっていきます。また、炎症が強い方ほど痛みが強く、改善が見込まれる方ともいえます。当院でも実施しておりますので、ご本人の希望があれば対応いたします。
急性喉頭炎
細菌やウィルス、アレルギー、喫煙などが原因となって喉頭に炎症を起こすことを「喉頭炎」言います。声のかれ・かすれ、咳が続く、のどの痛み、発熱などがあります。さらに喉頭は空気の通り道でもあるので、炎症で喉頭の腫れが強くなると呼吸がしにくくなることもあります。
喉頭炎には、急性喉頭蓋炎、急性声門下喉頭炎などの急激に呼吸困難となる疾患もあるため注意が必要です。また、喉頭のなかでも声帯の炎症が強い場合は、急性声帯炎 と呼ばれます。
主な症状
- のどの痛み
- 声がかすれる、声が出しにくい
- のどのヒリヒリ感、違和感
- 咳が続く、痰がでる
- 発熱がある
治療方法
治療方法としては、
- のどの炎症・痛みに対して:炎症を抑える薬を使用します。
- 細菌感染に関して:抗生剤を使用します。
- ネブライザー治療
薬物療法と合わせて、充分な睡眠(安静)と栄養補給を行い、室内が乾燥しないようにする事とできるだけ声を使わないようにしてください。また、喫煙者は禁煙するようにしてください。
【急性喉頭蓋炎】
食べ物を飲み込む際に、気管に侵入するのを防ぐ「喉頭蓋」に炎症が起きる病気です。
症状は咽頭炎、喉頭炎と同様、のどの痛み、発熱ですが、腫れが強く進行すると、息苦しくなり、窒息する危険もあります。痛みもひどく、含み声や声がれを伴い、息苦しいなどの症状が出てきた場合は、できるだけ早めに受診してください。治療は、抗生剤やステロイドの点滴となりますが、喉頭蓋炎の場合、軽症でも数時間で進行し窒息のリスクが出てくる場合もありますので、提携病院での入院加療をお勧めする場合があります。
【急性声門下喉頭炎】
声帯の下にある粘膜が炎症を起こして狭くなってしまい、のどの痛み、ひどい咳、息苦しいなどの症状を引き起こす病気です。喉頭蓋炎と同様、治療には、抗生剤の吸入、内服薬、点滴治療を行います。